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湘南の先輩インタビュー

Vol.002「鎌倉市稲村ヶ崎在住 細川夫妻」
2019.12.12

 

「湘南の先輩インタビュー」とは?

「湘南の先輩インタビュー」は、湘南に住む60代以上の先輩世代の方々にお話を伺うコーナーです。
60代以上の先輩方は、家づくり世代から見るとお父さんお母さんの世代であり、現在の湘南の街並みや文化を作り育んできた、素敵な方々がたくさんいる世代にあたります。そんな先輩方に家づくりの知恵や工夫、湘南暮らしのアドバイスをもらわないのはもったいない!
皆さまに成り代わって、素敵な湘南ライフを送る魅力的な先輩方にどんどんインタビューしていきたいと思います。

第二回は、鎌倉市・稲村ヶ崎在住の、細川幸正さん、細川節子さん夫妻にお話を伺いました。

 

先輩のプロフィール

細川幸正さん
東京都出身。80代。
英語教育の専門家で、都内の大学勤務。
退職後は俳句に打ち込んでおり、NHK全国俳句大会で入選する腕前。

細川節子さん
東京都出身。70代。
趣味は読書と文章を書くこと。
湘南トリビュートという地域新聞で編集・記者をされていた経歴も。
料理の腕前も抜群で、節子さんの作るイギリスの家庭料理はファンも多い。

 

インタビュー

—– 湘南に住み始めたのは、どんなきっかけで、いつ頃ですか?

幸正さん
末っ子が生まれたころだったから、1980年ですね。それまでは、転勤でイギリスに住んでいたんですが、戻ってきてすぐに鎌倉の城廻に越してきたんです。
鎌倉は小学校の修学旅行でも来たことがあって、その頃から、やっぱり憧れがあったんですよね。それと、イギリスに行って、自然環境が人間に与える影響ってすごく大きいなと思ったんです。なので、緑の豊かな場所でのびのび子どもたちを育てたいというのがあって、それが鎌倉を選んだ大きな理由の一つですね。

—– 現在の住まいに至るまでの経緯を聞かせて頂けますか?

節子さん
結婚当初は武蔵小杉の団地に住んでいました。
その後、父の家があった保土ヶ谷へと移り、主人の転勤で1977年から2年ほどイギリスへ。帰ってきてから、すぐに城廻の家を購入しました。

城廻の家は坂道の上にあって、上り下りが多少大変でしたが、富士山がきれいに見えたんですよ。そこはとても気に入ってましたね。それから、18年ほど住んで、息子の大学入学を期に、今の家がある稲村ヶ崎に移り住んできました。

—– 稲村ヶ崎に決めた理由はなんだったんですか?

幸正さん
それも偶然のめぐり合わせなんですよ。鎌倉山から七里ヶ浜を通って稲村ヶ崎へ抜けるルートをドライブしていたら、偶然、売地の旗が立っていて、ちょっと車を下りて見てみたんですよ。
そしたら、何だかいいんですよ。山を背負っているところも、少し内側に入っていて静かなところも気に入って。

節子さん
城廻の家は割と急な坂道の上だったので、少し大変に感じることもあったんです。
ここは比較的なだらかな道なので、そこも良かったのかな。

シンプルな中に凛とした佇まい。緑の中にしっとりと溶け込むように建っている

—– 家を建てるまでに、どんな準備をされましたか?

節子さん
2~3年くらいは、そんなに本気でもなくて、ドライブがてら色々なところを見て回っていたんですよね。モデルハウスもたくさん見に行きましたよ。もちろん、tvkハウジングプラザ藤沢さんも見に伺いました。
色んなところを見て回るって意外と大切で、たくさん見ているうちに、だんだんと住みたい家のビジョンが固まっていくんですよね。
それと、渡辺篤史さんの「建もの探訪」が好きで見てましたね。あの番組は大邸宅というよりは、多少狭くても工夫を凝らした素敵なお宅が多いんですよ。
とにかく見ながら、イメージを膨らました感じですね。

幸正さん
家内が熱心で、建築士さんも、実は家内が探し出してきてくれたんです。

—– そうなんですね。建築士さんって、どうやって探されたんですか?

節子さん
「建もの探訪」に出てきた建築家さん4人をピックアップしたんです。そのうちの2人の方と直接コンタクトを取って、最終的にある建築家の方に設計を依頼をすることになりました。

幸正さん
その建築家の方が面白い人で、すぐには作ってくれないんですよ。まず半年間、家の勉強しろって(笑)。
一生住む家を買うんだから、それくらいの期間どうってことないって。もっと家のことを知って、考えて、建てるべきという考え方なんです。
でも、そういうところも何だか気に入って。馬が合ったんですよね。

—– なるほど。しっかり知識を得て、自分の考えやプランを磨いてから購入というのは、どんな建て方を選ぶにしても必要なプロセスですよね。
また、ハウスメーカーさんにしても、設計事務所さんにしても、家に対する考え方が合うパートナーと取り組むということが大切なんですね。
とても参考になります。
では、このお宅を建てるにあたり、実際に大切にされたことって、どんな部分でしょうか。

幸正さん
とにかく、人が集まり憩える家にしたいと思っていました。他にも色々ありますが、結局そこが軸になって、全体の設計ができているのかもしれません。
たとえば、多くの人が集まって気持ち良く過ごせるようにリビングは大きめにとか、開放感を感じられるように窓はできるだけ大きくとか。お客さんが来たときにゆったりと泊まっていけるように和室も用意しましたね。

節子さん
息子の友だちが大勢来て、サッカーを観たときも楽しそうでしたし、カンツォーネやチェロのコンサートをここで開いたこともあるんですよ。出窓部分が座れるようになっているのも、テーブルの椅子に座るだけではなく、部屋全体に居場所がある空間にしたかったからなんです。

幸正さん
そうそう。みんなが集まってくれると、やっぱり建てて良かったなと思うよね。あと、こだわったのは、やっぱり暖炉かな。和風の家で暖炉って、意外とないでしょ。
設計士さんとタッグを組んでいる鉄の造形家さんが、この家のために一から作ってくれたんです。もともと家の隅に作るはずが、どうしても真ん中に備えたくて、煙突の形も含めて独特でしょ。造形家さんも、とても大変だったっておっしゃってました(笑)。
でも、この暖炉がやっぱりこの家の顔になってくれているんですよね。

みんなが憩える広々としたリビングルーム。カバザクラの床は月日を経てより柔らかい色合いへ

柔らかな曲線が美しい暖炉。冬は近所の山から薪を拾ってきて暖をとる

―― 確かにこの家に入ると何だか落ち着きますね。心も体もいつもより緩んでいるような気がします。改めて、空間が人に与える影響って大きいですね。
それでは、もし家を建てる世代にアドバイスをするとしたら、どんなことを伝えたいと思いますか?

節子さん
家を建てるということは、突き詰めていくと、どんな生き方をしたいかというところに行き着くと思うんです。できるだけ、じっくりと時間をかけて、どんな暮らしをしたいかということを考えて欲しいなと思います。
特に女性的な目線で言えば、台所は使い方が人それぞれだと思うので、ただ「素敵だな」だけでは決められないですよね。友人のお宅でもモデルハウスでも多くのケースを見比べておくと、自分なりのビジョンを磨いていけるんじゃないかしら。

幸正さん
そうだね、足で稼ぐという意識が必要かもね。家族でも、どんな暮らしをしたいかって、それぞれ違うんですよ。家内は平屋が良いって言っていたけど、僕は二階建てじゃなきゃ駄目というように、意見が食い違うこともある。でも、それは色々見てみないとわからないんです。だから、時間をかけて、お互いの目指すところをすり合わせていくという意識もきっと必要なんじゃないかと思いますね。

それと、家って一人で建てるものではなくて、設計士さんや職人さんなど、いろいろな方が関わって出来上がっていくんです。なので、自分の家を建ててくれる人たちを大切にして欲しいなと思います。お金を払っているから当たり前ではなくて、現場で手を動かす職人の方々に感謝の心を持つことは、とても大事ですよね。

僕は親父の代から、職人さんには、10時と15時のおやつは出すもんだって言われてたから、自分の時もそうしたんです。だって、職人の皆さんに気持ちよく働いて頂きたいから。

幸正さんの趣味の俳句はNHK全国俳句大会で入賞する腕前

節子さんが連載されていた湘南トリビュートの英国滞在日記。今読んでもとても面白い

―― 最後に、お二人にとって湘南の魅力ってどういうところでしょうか?それと、お気に入りの場所があれば、ぜひ聞かせてください。

幸正さん
うーん、やっぱり鎌倉に関しては、素晴らしいお寺がたくさんあるところが魅力だと思います。お寺が街の空気感を作っているところはあるんじゃないかな。僕は、特に観光客の方々があまり行かないようなところに、ひっそりとあるお寺が落ち着きますね。妙本寺や覚園寺なんかは本当に静かでおすすめですよ。

節子さん
まずはやっぱり海があるところかしら。海沿いをドライブして、逗子のなぎさ橋珈琲さんで、海を見ながらコーヒーを飲むのは気持ちいいですね。あと、稲村ヶ崎公園に沈む夕日も、本当にきれいなのでおすすめです。
それと、女性目線で見ると、おしゃれなお店が多いことは大きな魅力の一つですね。お洋服にしても、アクセサリーにしても、小さくてもポリシーのある素敵なお店が其処此処にあるので、それを見つけて歩くのが、とても楽しいんです。

―– お二人とも、素敵なお話、本当にありがとうございました。